農家の基礎収入の算定は?

夫が交通事故で死亡しました。夫は、代々続く農家の長男で、母と妻(私)も長年農業を手伝っています。死亡逸失利益の計算で、申告所得(農業所得)全額が基礎収入と認められますか?

夫の申告所得をもとに基礎収入を認定しますが、夫の所得の中には家族の労務の成果部分が含まれていることになりますので、夫の寄与の割合を乗じた額で基礎収入を認定します。

事業所得は、土地や建物や設備といった資本から生み出される利得や、家族や従業員の労働などの総体のうえで形成されていることも多く、このような場合には、事業収益中に占める被害者本人の寄与部分だけが逸失利益算定の基礎とされるべきで、事業所得に本人寄与率を乗じて本人の労務対価部分を算定します。

この点、参考となる裁判例をご紹介します(最二小判昭43・8・2)。

本事案は、畳表及びその材料の卸・小売業を営んでいた被害者が死亡した後、家族等が事業を継続したところ著しく業績が悪化したというものでした。

第1審は、事故前年の業績と事故後の業績の差額部分をもって被害者の得べかりし年間営業収益(基礎収入)であったとしました。

これに対して原審は、個人企業は会社企業と異なって経営者個人を離れて別個独立の存在をもつものではないとして、収益の全ては経営者個人に帰属するといういわゆる全額説(企業収益全額説)によったのですが、最判は以下のとおり述べて原審の全額説を否定し、差額(第1審)でもなく、全額(原審)でもなく、本人寄与の割合で算定すべきとしました。

最判の判示は「企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事することができなくなったことによって生ずる財産上の損害額は、原則として、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきであり、企業主の死亡により廃業のやむなきに至った場合等特段の事情の存しない限り、企業主生存中の従前の収益の全部が企業主の右労務等によってのみ取得されていたとみることはできない。したがって、企業主の死亡にかかわらず企業そのものが存続し、収益をあげているときは、従前の収益の全部が企業主の右労務等によってのみ取得されたものではないと推定するのが相当である」としています。


後遺障害の等級認定を事故直後から徹底サポート
  • メール受付
  • ご相談の流れ